強迫性狂愛
「百花、お母さんのことだ」

「…え?」



百花は、迅の手を握ったまま、不安そうに顔を上げた。



「十河と婚約の顔合わせには、千華家も来る。百花のご両親のことが、その時何かわかるかもしれない」


「でも…、お母さんは…」


「百花は、果音さんが死んだと思ってるのか?」


「………」


「少しでも僅かな希望があるなら、俺はそれにかける。だから、俺も不本意ではあるが、十河と百花の婚約を認めざるをえない」


「…やだよ…、迅…」



さっきから涙の止まらない百花を迅は、静かに抱き寄せる。



「大丈夫だ。十河と話はついている。俺も千華家との顔合わせには行く」


「でも…」


「その日までは、百花はここにいいていいことになってる。だから、なんとしてもその日に解決したい」


「迅……」


「信じろ」



迅の力強い瞳に、百花はゆっくりと頷いたのだった。



それから千華家との顔合わせの日まで、百花は迅と決して離れようとしなかった。


眠る時も、互いに抱きしめあって眠りついていた。
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