強迫性狂愛
全くもって何を考えているのかわからない窓際のイスに腰掛ける迅の横顔を見つめたまま、本に興味がある振りをしながら静かに声をかけた。


「ねぇ、迅…」


沢山の本に囲まれた本棚の前で、適当に本を手に取っては戻していく行為を何度も繰り返す。

何の返事もないことに、恐る恐る迅のいる方へと顔を向けると


「………」


暖かそうな光に体を預けたまま、瞳を閉じる姿はまるでお人形さんみたいに綺麗で……儚くて――…


思わず、触れてしまいたくなる。


陶器みたいな透明な肌…


「……寝てるの?」


近づきながら声をかける。

それでも返ってこない静寂に、独り言のように呟いた。


「――…どうして、私を側におくの?」


きっと誰だって同じ状況に立たされたら、聞きたくなるに決まってる。


なぜ、突然道端で出会った私を家族から引き離してまで側におこうとするのか


どうして、そんな風に独占しようとするのか。
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