強迫性狂愛
息の上がる男の人に静かに近づいて、腰を降ろした。


「…手、貸してくださいね」

「……っ、やめろ…っ」


男の人の制止を無視して、笑顔で安心してください、と心の中で呟いてから、酷く冷たい男の人の手を両手で包んだ。


そして、想いを込めて瞳を閉じる。





――苦しいのがなくなりますように。



痛いの、痛いの…とんでけ…





昔、お母さんがそうやって私のことを慰めてくれた。


そう願いを込めると、本当に痛いのが消えていくの。



だから――…




「……………」

「どうですか?少しは楽になりましたか?」


さっきよりも、赤みの戻った顔を見て私も安堵する。
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