饅頭(マントウ)~竜神の贄~
「柄の悪い男を連れた男でしょう。隣町に流れてきた他国の者だそうですが、何をやらかしたのか、急速に力をつけて、隣町の長も手が出せないとか。そいつが今度は、この町に目を付けたようで。勝手にこの森に入り込んでいるのです」

「奴らがここに入り込むのは、供物の横領のためですよ。この森を恐れなければ、これほど人知れず事を運べるところもありますまい。町の者ですら、誰も近づかないところですからね。この町の誰かを買収でもして、川上で祭事が行われるたびに、連絡を受けていたのでしょう。他の町でも、そういう供物泥棒をして財を築いていたんじゃないですか?」

「何と! ・・・・・・そうか、何故他国者がこのような秘儀用の神殿の傍で、しょっちゅううろうろしているのか不思議でしたが、なるほど、そういうことなら納得です。奴は仕事を持っているわけでもありませんし。・・・・・・そうか、だからいきなり姫君を貰いたいとかいう申し入れをしてきたのか」

 抱き起こした虎邪にもたれて気を失っている神明姫に、老神官は痛ましい目を向けた。
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