饅頭(マントウ)~竜神の贄~
「出でよ! 海の邪竜、シーサーペント!!」

「ここ川だよ」

「何だって良いんだ! 黙ってろ!」

 そんなやり取りの掛け声にも関わらず、川面がいきなり割れ、水が明らかな生き物の形を取った。
 川全体が身体の竜が、鎌首をもたげたようだ。

「すっげ・・・・・・! ほんとに竜神だ」

 まるで水の竜である。
 そのとき、馬車の音が響いた。

「虎邪様!」

「姫?」

 振り向くと、矢のように走ってきた馬車から、神明姫が転がるように降りてきた。

「うううう・・・・・・」

 どうやら二日酔いの上に馬車を飛ばしてきたので、一段と具合が悪くなったらしい。
 乗り物酔いも上乗せされたようだ。

 神明姫は真っ青な顔で、その場にへたり込んだ。
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