饅頭(マントウ)~竜神の贄~
 その姿は、まさに猛り狂った竜そのもの。
 口をがばっと開け、破落戸に襲いかかると、ばくん! という感じで口を閉じる。

 その瞬間、破落戸の姿は消え、代わりに大量の血が飛沫となって降り注いだ。
 一口で食われたのだ。

 お付きの者二人を食われた男は、初めに掠ったのだろう、肩から血を流し、がくがくと震えている。

 破落戸らを食らった後で、竜神の姿は消えたが、川面は相変わらず、あり得ないほど波立っている。
 主犯格の男の始末は、虎邪の手に委ねられた。
 男は祭壇の上で、腰を抜かしている。

「最後はやっぱり、ちゃんとした神官の手で供物を捧げないとな」

 言いながら腰の剣に手をかけ、歩み寄る虎邪に、男は脂汗を流しながら、必死で首を振る。
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