饅頭(マントウ)~竜神の贄~
「な、何をする気じゃ・・・・・・」

 ずるずると後ずさろうとするが、腰が抜けているため、動けない。

「見ただろう。竜神は、貴様が供物を盗んだお陰で、お怒りなんだよ。てめぇのしたことの尻拭いぐらい、てめぇでするべきじゃないか?」

 かちり、と虎邪の剣の鯉口が切られる。
 その音に、男は青くなって、手をぶんぶんと顔の前で振った。

「ば、馬鹿な! おぬしも神官ならわかるじゃろうがっ! ホレ、助けてくれたら、この首飾りをやろう。腕輪もやるぞ?」

 じゃらじゃらと不相応に身を飾った宝石類を、がしゃがしゃと取って差し出す。
 虎邪は、ふんと鼻を鳴らした。

「それだって、元は竜神から奪ったものだろ。あのな、確かに神官は、供物のおこぼれを頂戴するよ。けどなぁ、それは、それ相応の奉仕をしてる故だ。毎朝ちゃんと祈りを捧げ、神殿の掃除をする。供物だってな、都市の神官だって、お前のように根こそぎ盗む奴なんざいねぇ。お前は神官を嘗めすぎだ。神官ってのは、誰より神様の怖さをわかってる人間なんだぜ」
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