饅頭(マントウ)~竜神の贄~
 がくがくと震える男の手から、大粒の宝石が落ちた。
 すぐ傍の川が、催促するように、祭壇にも水を運んでくる。

「くっ・・・・・・くそぉーーっ! お前なんぞに、やられるものかぁっ!!」

 いきなり男が、両手を突き出して虎邪に掴みかかろうとした。
 瞬間、虎邪の手が動く。

 しゅっという風の音がしたかと思うと、ぱっと血が飛んだ。
 同時に何か、それこそ饅頭のようなものが宙に飛び、それを待ち構えていたように、川の水が大きく跳ね、赤い線を描きながら飛んだモノを、ばくん! と取り込んだ。

 そして水柱は崩れ、盛大に辺りを水浸しにした後、川は何事もなかったかのように、さらさらと流れ出す。

 虎邪は川を見ていた視線を、目の前の祭壇に戻した。
 男は狙ったように、祭壇の上にいた。
 まさに竜神に捧げられた感じだ。

 祭壇の上の男は、夕べ神明姫がなるところであった姿になって、横たわっている。
 首がないのだ。

 虎邪が飛ばした男の頭は、竜神に持ち去られたのだろう、どこにもない。
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