饅頭(マントウ)~竜神の贄~
「派手にやったもんだねぇ。皆殺し?」

 きょろきょろと辺りを見回しながら、緑柱が言う。

 地面は土だし、最後に水が降り注いだので、辺り一面血みどろということはないが、少し向こうには、もがれた片腕が落ちている。
 祭壇の上には首無しの死体があるし、これは近寄りたくない光景だろう。

「言っておくけど、俺がやったんじゃない。竜神に食われたんだぜ?」

「お行儀悪いなぁ~。食べ残しがあるよ」

 のんびりと緑柱が言いながら、ちょい、と足先で落ちている片腕をつつく。
 その途端、ざぱ、と川が波立ち、少しだけ緑柱の爪先を濡らした。
 わ、と緑柱が飛び退く。

「こら緑柱。竜神を怒らすなよ」

 虎邪の言葉に、そうだそうだと言うように、川はざぱざぱと細かく波立つ。
 しかしさっきのような、いかにもな大波ではない。
 何となくその態度からして、竜神は虎邪たちを気に入ったようだ。
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