饅頭(マントウ)~竜神の贄~
「でもこの死体を、このままにしておくわけにもいかないなぁ~」

 祭壇の上に目を落とし、虎邪は呟く。

「こういう祭事の後は、どう処理していたのです? 竜神に捧げるのは、生け贄の頭でしょう? 身体は?」

 老神官に、虎邪が問う。
 そこでようやく、老神官は木の陰から、そろそろと虎邪のほうへ歩み寄った。

「いつもはちゃんと、葬ってやりますよ。罪を犯した者ではないですから。その祭壇の下が、墓になっているのです」

 言われてよく見てみれば、石畳同士の間に、少し隙間がある。
 組み合わさった石が、動くようになっているのだろう。

「でもその者は、同じ墓には入れたくありませんな。かといって、ここに打ち棄てても、この森は獣が住まうような森ではありませんし・・・・・・」

 老神官が困っていると、不意に波が大きくなり、ざぱん、と祭壇の上を浚(さら)った。
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