饅頭(マントウ)~竜神の贄~
「時に長。今回の神官派遣要請は、以前起こった水害の事後調査のためですか?」

 それならそう手間取ることもあるまい。
 さっさと済ませて、神明姫と親しくなりたいものだ、と、虎邪は長に声をかけた。

 が、そんな虎邪の目論見は、長が首を振ったことで、脆くも崩れる。

「いや・・・・・・。事はそんな悠長なことでは。地形を見ていただければ、おわかりかと思いますが、この地は特に、水害が多ぅございます。前の水害では、町の三分の一が水没しました。作物も流されてしまいましたし、こうも度々流されていては、今にこの町は、人の住めぬ不毛の土地になってしまいましょう。そこで、是非とも神官様に、水神の怒りを鎮めるべく、大々的な祈祷をお願いしたく、遙か中央から力ある神官様を派遣していただいたのです」

「はぁ・・・・・・」

 若干胡乱な目になりながらも、虎邪は相槌を打った。
 これはまた、厄介な事柄を引き受けてしまったのかもしれない。

「この町を流れる竜神川は、わが町に、恵みと共に、とんでもない厄災をももたらします。その力は絶大で、とてもこの小さな町の神官では、抑えきれるものではありません。もう今までのような、その場しのぎの儀式では、とても追いつかないのです」
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