饅頭(マントウ)~竜神の贄~
「し、神明姫? こ、こんなところで、何をして・・・・・・」

「・・・・・・うっ・・・・・・ふぇっ・・・・・・」

 いきなり現れた姫に、虎邪は嬉しさよりも驚きが勝り、姫はそんな虎邪の剣幕と、突きつけられた剣に恐れおののいたようだ。
 恐怖で神明姫は、大きな目からぼろぼろと涙を流してその場に頽れた。

「うっ・・・・・・ひっく」

 己のすぐ前で泣き崩れる姫に、虎邪はちょっと困った顔をした。
 とりあえず、突き立てた剣を引き抜き、鞘に戻す。

「驚かせてすみません。でも、このようなところで気配を消していては、斬り払われても、文句は言えませんね」

 虎邪にしては冷たく言い捨てる。
 緑柱が、代わりに姫の前にしゃがみ込んで、慰めてやった。

「確かに主の言うことも、もっともですよ。ただでさえ主は、今はお疲れです。旅をしてきた者は、しばらくは殺気立っているものです。不用意に近づくと、それこそ斬り捨てられますよ」

 ・・・・・・慰めなんだか、脅しなんだか。
 どうも緑柱の言うことは、当を得ているような、そうでないような。
 今の虎邪に当てはめてみれば、緑柱の言うとおりかもしれないが。
< 21 / 127 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop