饅頭(マントウ)~竜神の贄~
二人が家に入ると、老神官は椅子を勧め、自身は彼らの正面に座った。
虎邪は手に持っていた宝石の欠片を、ぽい、と前のテーブルに放った。
「取り忘れですよ」
あえて賭けに出てみる。
ぴくり、と老神官の顔が強張った。
だがあからさまに狼狽えないのは、仲間意識のなせる技か。
供物に手を触れられるのは、どこの地でも神官のみ。
故に、供物の横領が神官の特権であることは、どこでだって共通のことだ。
神官にとっては最早当たり前のことなので、神官同士だと咎められることでもない。
「これはこれは。どうぞ、そもそも神に捧げたものですから、都市の神官様に拾われたのなら、そちらに行くべきものなのでしょう」
にこやかに、宝石を押し返す。
小さいが、無価値なものではない。
この地ではともかく、都市に行けば、いくらでも換金できるところもある。
口止め料も入っているのだろう。
虎邪は、ふ、と息をついた。
「俺はそういう神官の汚さが嫌いなのですよ。やたらと儀式を行っているわりには、水害は一向に減らない。そらそうですよね。儀式を行うのは、神官の懐を潤わすためなのですから」
「えっ」
ぐるりと室内を見渡して言った虎邪に、老神官は心底驚いた顔をする。
虎邪は手に持っていた宝石の欠片を、ぽい、と前のテーブルに放った。
「取り忘れですよ」
あえて賭けに出てみる。
ぴくり、と老神官の顔が強張った。
だがあからさまに狼狽えないのは、仲間意識のなせる技か。
供物に手を触れられるのは、どこの地でも神官のみ。
故に、供物の横領が神官の特権であることは、どこでだって共通のことだ。
神官にとっては最早当たり前のことなので、神官同士だと咎められることでもない。
「これはこれは。どうぞ、そもそも神に捧げたものですから、都市の神官様に拾われたのなら、そちらに行くべきものなのでしょう」
にこやかに、宝石を押し返す。
小さいが、無価値なものではない。
この地ではともかく、都市に行けば、いくらでも換金できるところもある。
口止め料も入っているのだろう。
虎邪は、ふ、と息をついた。
「俺はそういう神官の汚さが嫌いなのですよ。やたらと儀式を行っているわりには、水害は一向に減らない。そらそうですよね。儀式を行うのは、神官の懐を潤わすためなのですから」
「えっ」
ぐるりと室内を見渡して言った虎邪に、老神官は心底驚いた顔をする。