饅頭(マントウ)~竜神の贄~
「そ、そんな。いや、ここの神は、供物を受け取ってくださいますよ。現に流した供物は、下流に流れ着くことなく消えております」

「それが不思議なのです。あなたが懐に入れるのは、供物の全てではないと仰いましたね。どれぐらい掠めているのです?」

 ずい、と虎邪が身を乗り出す。
 質問が直球すぎて、老神官はたじろいだ。

「・・・・・・ちょっと言い方を変えましょうか? 供物の何割を、神が受け取っているのです?」

 にっこりと笑みを浮かべ、虎邪が聞く。
 どうも虎邪の魅力は、相手を小馬鹿にしているときに最も発揮されるようだ。
 魅惑的な笑みに、老神官までが、どきりとする。

「えっと。そ、そうですねぇ。わ、わたくしが頂くおこぼれは、ほんの一割が二割ぐらいですよ。荷物運びの代金ぐらいですかねぇ」

 しどろもどろに、老神官が答える。

「は? それだけしか掠めないのですか」

「ええ。何分この老体なもので、上流の神殿から運ぶのも、キツいのですよ」

「だったら、あとの八割はどこへ?」

「それは神が・・・・・・」

「ああ、はいはい。そうでしたね」

 老神官の言葉を遮り、虎邪はひらひらと手を振った。
 自分で聞いておいて、随分失礼な態度だ。
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