饅頭(マントウ)~竜神の贄~
「あのぅ。緑柱様も、神官ですの?」

 器を渡しながら、神明姫は緑柱に探りを入れる。
 探りといっても、夢の中の人物のことも、よくわからない。
 何が決め手になるのかは、神明自身、わからないのだが。

 緑柱は、ちょっと首を傾げて虎邪を見た。

「どうだろう? 虎邪、俺は何になるんだろうね?」

「お前は俺様の下僕だな」

 しれっと虎邪が答える。
 緑柱も特に気分を害することもなく、神明姫に視線を戻した。

「だ、そうです」

 何となく、緑柱はどこかぼんやりしている。
 たまに鋭い突っ込みを入れるが、それとて的を射ているようで的外れだ。
 つかみ所がなく、不思議な印象。
 そんな感じだ。

 神明姫は、怪訝な表情で緑柱をまじまじと見た。

---夢の中では、私はあの人に会えて、物凄く嬉しかったわ。でも・・・・・・この人に対して、そんな気持ちを持てるかしら---

 神明姫の視線も気にせず、ずずっと粥を啜る緑柱を見ていると、不安になる。
 今は全く何も思わないし、この先もこのぼんやりとした人に惹かれるとも思えない。
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