饅頭(マントウ)~竜神の贄~
 ぶつぶつ言いながら、腰を落とす。
 その様子を見、初めて神明姫は、あれ、と気がついた。
 緑柱は、剣を差していない。

「そんな細腕で、俺たちを気絶させられるとでも思ってんのかぁっ?」

 破落戸どもが、破落戸らしい言葉を吐きながら、緑柱に襲いかかる。
 神明姫は息を呑んだ。

 緑柱は丸腰なのだ。
 一方破落戸どもは、一人は棍棒、一人は斧のようなものを振りかざしている。

「死ねやっ!」

 破落戸その一が、棍棒を振り下ろした。
 ひょい、と少し動いて、緑柱は棍棒を避けるが、破落戸その二が、すかさず斧を打ち込んでくる。

「あっ危ないっ!」

 思わず叫んだ神明姫だが、緑柱の身体にめり込みそうになった斧は、いきなり何かに弾かれて地に落ちた。

「あれれぇ。緑柱、何か鈍ってない? やっぱ一人、引き受けようか?」

 のほほんとした言葉に神明姫が顔を上げれば、虎邪が、へら、と笑っている。
 手が浮いている。
 先程斧が落ちたのは、虎邪が何かを放ったのだ。

「そうかな。ちょっと嘗めてたかも」

 ぼそ、と言い、緑柱は、ぽん、と己の腰を払った。
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