饅頭(マントウ)~竜神の贄~
「でも虎邪に任せたら、後が厄介だもの。左遷先での揉め事は、避けたほうが良いだろ?」

「まぁね。ていうか、左遷て言うな」

 全く緊張感なく話す虎邪と緑柱に、破落戸たちは少しペースを乱されたようだ。
 怪訝な顔で、お互いちらちらと片割れを窺っている。

「ということで、とっとと片付ける」

 言うなり緑柱は、一旦低く沈むと、一気に地を蹴った。
 慌てた破落戸その二の喉に、肘鉄を食らわせる。
 破落戸その二が吹っ飛び、その手から放れた斧を掴むと、緑柱は振り向きざま、破落戸その一に投げつけた。

 だが。

「ぎゃっ!」

 声を上げたのは、虎邪だった。
 虎邪の腕の中にいる神明姫は、声も出ない。
 緑柱の投げた斧は、破落戸その一は無視して、虎邪のすぐ後ろの木に突き刺さっていた。

「あ・・・・・・ごめん」

 ぽりぽりと頭を掻きながら、緑柱が謝る。
 てへ♪ とでも続きそうな軽さだ。

「失敗するにも程があるだろがぁ! 全然反対方向じゃねーかっ!!」

 虎邪が激怒し、緑柱を叱りつける。
 確かに今の並びは、一直線上に、虎邪と姫、緑柱、破落戸その一の順だ。
 全くの正反対方向に斧を投げつけたことになる。
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