饅頭(マントウ)~竜神の贄~
「おお、すでにそこまでお知りですか。そうです。あそこで生け贄を、川に投げ込むのですよ」

 ぶほ、と虎邪が、お茶を噴き出す。

「な、投げ込むのですか・・・・・・。なるほど、確かにそれは、腕力がいるでしょうな」

 そんな物騒なことをさせられるのかと思うと、さすがの虎邪も気が滅入る。

「でも、さすがに俺でも、牛や豚を抱え上げられるほどの力は、ありませんよ」

 渋い顔で言う虎邪に、老神官は意外そうな顔を向けた。

「牛や豚? 竜神は怒っているのですよ。そんなもので、機嫌が直るわけないじゃないですか」

「そうなんですか? 生け贄って、そういうものかと・・・・・・」

 言いながら、虎邪は嫌な予感を感じた。
 もっとも力の強い生け贄というのは、人間だ---

 虎邪の心に答えるように、老神官は、一本の串を差しだした
 昨日、水占いに使ったものだ。

「これが示す生け贄を、竜神に捧げるのです」
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