饅頭(マントウ)~竜神の贄~
 虎邪は黙って、目の前の串を手に取った。
 細い串の一端に、印がついている。
 おそらくこの印が、個人を示すものなのだ。

 じ、と小さな印を見つめていた虎邪の瞳が、鋭くなった。

「この印は・・・・・・」

 何度も使われた、ちゃんと謂われのある呪具なのだろう。
 印もかすれているが、これが示しているものは・・・・・・。

「・・・・・・正気ですか?」

 硬い表情で、虎邪は目の前の老神官を見た。

「正気も何も、神の選ばれたかたです。すでに長には、連絡が行っておりますよ。この町では、皆そういう教えは受けております。誰が選ばれても、従いますよ」

「いつ行うのです!」

 穏やかに言う老神官に被る勢いで、虎邪は叫んだ。
 隣の緑柱が、驚いて虎邪を見上げる。

「え? ええっと、何せ災害が立て続けなのでね、早くしたほうが良いだろうとのことで、明日・・・・・・」

「明日?!」

 虎邪の剣幕にびびりながら、老神官は、こくこくと頷く。
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