饅頭(マントウ)~竜神の贄~
 二人がやってきたのは、水竜の町。
 大陸中心部の、一般的な町一つにも満たない、小さな町だ。

 丘を降りながら、二人はきょろきょろと町を眺める。

「ふ~む、何か酷い水害があったらしいけど」

 見たところ、そう被害があったようには見えない。

「・・・・・・まぁ、俺たちが出立したころの話だからなぁ」

 二人が国を出たのは、三月ほども前のことだ。
 すでに町は、普通の状態に戻っている。

「あれが噂に名高い、竜神川だな」

 たたた、と土手を降りながら、虎邪が言う。
 この町に恵みと災害をもたらす、大きな川。
 虎邪は水害の多いこの地に、修行がてら派遣されたのだ。

「そろそろ日が暮れる。とっとと宿にありつこうや」

 緑柱が辺りを見回しながら言うが、目に付くのは大した建物ではない。
 都市から出てきた若者には、全て掘っ立て小屋に見える。
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