饅頭(マントウ)~竜神の贄~
 自虐的にそう思いながら笑っていた神明姫だが、ふ、と笑いを引っ込めた。
 じわ、と涙が浮かぶ。

---でも、守ってくれるときは、真剣に守ってくれたもの。ずっとふざけてるわけじゃないし---

 考えれば考えるほど悲しくなり、神明姫は座を立った。
 そのまま、自室には行かず、離れへと続く回廊を歩いていく。
 虎邪に会いたい、と思っていたのに、離れには灯りはついていなかった。

 折角素直に、己の気持ちを認めて会いに来たのに、何故あの軽い男は、こういうときに限っていないのか。
 酔いも手伝い、神明姫は回廊で足を踏ん張ると、夜空に向かって思いきり吠えた。

「あのアホ神官!! 何やってんだ、馬鹿野郎ーーーっっ!!」
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