饅頭(マントウ)~竜神の贄~
 必死でページを繰る虎邪の指が、ぴたりと止まる。
 渋い顔で、緑柱を振り返った。

「確かにもう一回捜してもらうって手もあるが、面倒だからなぁ」

 緑柱は聞いたデータを元に、膨大なものの中から目的のものを探し当てることができる。
 例えそれが、ある本の内容の一部だったとしても、全ての本を読むことなく、目的の本を選び出すことができるのだ。

 ただそのためには、捜したい内容を、かなり詳細に緑柱が把握しないといけない。
 緑柱の認識が、目的のものとずれてしまうと、全く見当違いのものしか見つからないのだ。

 現に今だって、一応初めに緑柱が選んだものの中から捜しているのだ。
 なのに、半日かかっても、さっぱり見つからない。

「しかも、祭事に関わることってのは合ってるから、下手に読み飛ばせない。返って厄介だ」

 うおお、と唸りながら、虎邪が頭を抱える。
 緑柱の能力は、役に立つようで微妙に厄介なのだ。
 捜し求めているものでなくても、微妙にキーワードは被っているため、そこからさらにちゃんと捜さないと、目的のものまで見落としてしまう。
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