饅頭(マントウ)~竜神の贄~
「だから、今度はもうちょっと集中して、その残った分の中から捜すよ。えっと、水害に関する儀式で、生け贄が必要で、森の神殿で行うやつだね」

 えらいアバウトな認識である。
 虎邪は少し考えて、軽く手を振った。

「頑張って、もう一度全体から捜してくれ。大陸全体で、荒ぶる水神を鎮める効果のある儀式ってやつで」

「ええ? 何か検索範囲が広がってない?」

「いいんだ。この町に拘らないほうが、いいかもしれない。とにかく『水神を鎮める』ってことを第一に捜したほうがいいだろう」

「また読む本が増えそうだけどなぁ」

 言いながら、緑柱は餅を一つ口に放り込むと、立ち上がって書庫の奥を向いた。
 深呼吸して気を整え、しばらく目を閉じる。

 虎邪にも、ぴし、とある種の気が張ったのがわかったとき、緑柱はゆっくりと目を開いた。
 山と積まれた本に近づき、何冊か引き抜いていた緑柱は、一番奥に目をやって、わ、と声を上げた。
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