饅頭(マントウ)~竜神の贄~
「・・・・・・虎邪様は、まだお帰りにならないのね」
「神官様は、おそらく祭事の準備で神殿に詰めているのだと思います。だって、あの神官様は、そのために来られたのでしょう?」
ああ、そういえばそうだったかも、と、神明姫はぼんやり思う。
生け贄に選ばれてからというもの、思考は霞がかかったように、ぼんやりしている。
今宵竜神に捧げられるというのに、何か落ち着いているのも、そのためだ。
相変わらずぼんやりと月を眺めていると、やがて屋敷の前に馬車が止まる気配がした。
神殿からの迎えだ。
ふと、迎えに来たのが虎邪ではないかと思った神明姫だったが、玄関で顔を合わせたのは、いつもの老神官。
周りを見ても、虎邪と緑柱の姿はない。
---何を期待しているのかしら---
ふ、と笑みを浮かべ、神明姫は家の者に挨拶すると、ふわふわと夢の中のような心地で、馬車に乗り込んだ。
「神官様は、おそらく祭事の準備で神殿に詰めているのだと思います。だって、あの神官様は、そのために来られたのでしょう?」
ああ、そういえばそうだったかも、と、神明姫はぼんやり思う。
生け贄に選ばれてからというもの、思考は霞がかかったように、ぼんやりしている。
今宵竜神に捧げられるというのに、何か落ち着いているのも、そのためだ。
相変わらずぼんやりと月を眺めていると、やがて屋敷の前に馬車が止まる気配がした。
神殿からの迎えだ。
ふと、迎えに来たのが虎邪ではないかと思った神明姫だったが、玄関で顔を合わせたのは、いつもの老神官。
周りを見ても、虎邪と緑柱の姿はない。
---何を期待しているのかしら---
ふ、と笑みを浮かべ、神明姫は家の者に挨拶すると、ふわふわと夢の中のような心地で、馬車に乗り込んだ。