饅頭(マントウ)~竜神の贄~
「う~ん・・・・・・。どれもそれらしいといえばそれらしいし。違うといえば違うような・・・・・・」

 ぶつぶつと、緑柱が本をめくりながら言う。
 虎邪と緑柱はまだ、神殿の書庫で書物を読んでいた。

「生け贄って、まぁ考えてみればポピュラーだものねぇ。いろんな方法が載ってるよ? このうちどれを使うのかは・・・・・・わかんないなぁ~」

 ページを繰りながら言う緑柱の向かい側で、虎邪は黙々と件(くだん)の分厚い本を睨んでいる。
 この虎邪も、こんな表情ができるのだな、と思うほど、見たこともないほどの真剣な表情だ。

「あ。ねぇ虎邪。いつの間にか、すっかり夜だよ。道理でお腹減ったと思った」

 上のほうに小さくあるだけの天窓を振り仰ぎ、緑柱が言った言葉に、虎邪はしばらくしてから反応した。

「・・・・・・夜?」

 顔を上げ、じっと天窓を見てから、はっとする。
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