饅頭(マントウ)~竜神の贄~
「え~・・・・・・? 一体領主の屋敷はどこだよ。大体わざわざ都市から神官が出張ってきたってのに、迎えの一つも寄越さないって、どういうこった」

「それは虎邪が、お付きの者を振り切って、とっとと先に来たからだろう」

 緑柱の言うとおり、ちゃんとした紹介の書状はあるのだが、そういった物々しい取引の上での派遣となると、それなりの人数が、ぞろぞろとやってくるものだ。

 それが、虎邪には煩わしい。
 家の者が、お付きの準備をしているうちに、とっとと緑柱だけをつれて、この町までやってきたのだ。

「ううむ。そうだとしても、身なりでわかろうに。全く気の利かない田舎者め」

 ぶつぶつと文句を垂れる。
 身なりも何も、周りには人っ子一人いない。
 彼らを見ている者など、いないのだが。

「とはいえ、日が落ちてしまう前に、宿は確保したいものだな」

 緑柱も、このまま野宿する気はない。
 虎邪と共に、周りを見渡した。

「とりあえず、神殿に行くか」

 神殿同士の付き合いは強い。
 このように寂れた町でも、ある程度の繋がりは都市ともあるはずだ。
 神殿の者は、神殿にさえ行けば、何とかなるのだ。

 しかし。
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