咲かない桜が咲くまで
「ありがとう…」
「いや…この間のお詫びって事で…」
「あっそうなんだ…」

嬉しかった…蓮の向けられていたその瞳
最初すごく怖かった…
だけど、私に謝っているこの目は好きだ

「病気のこと…春に聞いた…」
「そう…」
「ごめん…」
「気にしてない…」
「嘘だろ?」
「本当だよー」
にっこりわらってみせた
初めてだった…作り笑いをするのは
春だけ…春だけに
本当の笑顔を見せることが出来る

「俺……かも…」
「えっ…?」
「なんでもねぇーよ」
そう言って蓮は私の頭をくしゃくしゃに
して満更でもない様な顔をして
後ろを向いた

すると、ポツポツと雨が降ってきた
傘は持っていない…
そういえば、春は傘を持っていたっけ?
私は蓮と別れ、春を探した
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