咲かない桜が咲くまで
春sideー

「琉良…」
満開の桜の木…
横たわっている俺の妻…

体はまだ暖かい…

なぁ…教えてくれ…

琉良は幸せだったのか?
琉良は俺といて幸せだったのか?

答えを…声を…もう一度聞かせてくれよ
琉良…頼むもう一回…俺に愛してるって
言ってくれよ…

「琉良…ぃ!」

桜の木は…ヒラヒラと花びらを落とし
琉良の髪に絡まった
「!?」
琉良の首には…
琉良がまだ一年の頃に俺があげた
ペアリングがかかっていた

そして、俺はティッシュを取ろうと
ポケットに手をつっこんだ

かさっ

「?」
中から紙切れが出てきた

春へ

病院の私の担当の先生に
プレゼントを春に渡してくれるよう
頼みました…

私が渡せない体になってしまっていたら
担当の先生に
プレゼントを受けとって下さい

愛してる…もっと生きたい
春ともっと一緒に生きたかった

誰よりも愛してる…


咲夜 琉良



『咲夜 琉良』

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