The Back Unit
声が聞こえた。
「はぁ?んだこの声…」
男の人達も聞こえたらしく辺りをキョロキョロと見回す。
しかしここには街頭に照らされたさびれた工場と、黒く染まる海だけ。
「んだよ、勘違いかよっ」
そういって男が僕に向き直った。
その瞬間また恐怖がよみがえった。
(怖い…怖い…死にたくない……!!)
そう思った瞬間グラッと体がよろけた。
もちろん僕の体だ。
(こんな時に……限って…)
めまいはするわお腹と全身が痛いわ寒いわ怖いわで……
僕は精神的におかしかったのかも知れない。
目の前に白っぽい青年っぽい男の子が見えた。
そしてその人の足元にはさっきまで僕を殺そうとしていた男の人達。
そして男の子が僕の方へ振り返る……
ハッと正気に戻った。
(あ…れ……?)
さっきの映像はもうどこにもなくて、元通りだった。
つまり男の人が僕にナイフを差し向けている。
(…あぁ…もう死んじゃうのか……)
さっきのは走馬灯?それとも幻覚?
どっちでもいいからそうなって欲しかったなぁ……
ザッザッとナイフを持った男がすぐそこまで来ていることを感じながらそう願った。