地下世界の謀略
「ーーともかく、今日の夜確認してみよう」
「え、夜って危なくないの?」
「昼間より静かだから、逆に奴らの気配も感じやすいだろ。」
「それはうん、一理あるかな」
それはあちらにも言える事なんじゃないかと思ったが、理貴さんも同意しているから無碍には出来ない。
「…まあ、理貴さんが言うなら」
「決まりだな」
余りにも即決すぎて展開についていけないが、逆に早く情報を得るには直接見に行く事が得策なのかもしれない。それに、
(アルト…焦ってる)
私が気づくくらい何かに、焦っている。
日に日に姿を見せない時が増えているのにも、私が気づかないと思ったのだろうか。
敢えて追求はしなかったが、本当はもう遠慮せずに聞いてしまいたい気持ちで一杯である。
そう思ったのもつかの間、またアルトは私たちがいる部屋からフラッと出ていってしまった。
(……少し、息苦しそう?)
今度こそ我慢ならない月は、その背中を無言で追うことにした。後ろで自分の名前を静かに呼ぶ理貴さんの声も聞こえたが、私の足は止まらなかった。
部屋を出てすぐ近くの扉の奥から呻くような音がして、月は恐る恐るその扉の前まで足を進める。琉君達の笑い声が遠くに聞こえるくらい、不気味なほど、静かな時が此処を流れている気がした。
段々大きくなる中からの苦しげな声に、月はハッとしてノブを横に捻る。
「……アルト?」
小さな音を立てて開いた扉の先には、思いもよらない光景が広がっていた。
「っ!」
月は直ぐさま駆け寄った。