地下世界の謀略
遺跡へ
出発の時間になった。
各々が身支度を済ませ、協会の入り口に集まっていた。が。
「い、や、だああああああっっ!!!」
発狂する声の主は、教会に住む小さな三人組によって、行く手が捌かれていた。
特に駄々をこねたのは琉くんだった。
「琉!足離せ!!」
彼らなりの必死の抵抗なのか、アルトが大きな声を出そうが怒鳴ろうが子供達三人は彼の脚からしがみついて離れなかった。
「連れてけるわけねえだろ!遺跡に!お前達も!!」
「……だってええええ戻ってこないんでしょおおお」
「死にに行くみたいな言い方やめろ!!」
琉達は無意識に私達3人が危ない場所へ赴こうとしている事を悟っているようだった。
まるでコントのようだがこれはこれで子供達は必死である。気持ちが分からなくもない私と理貴さん、そして3人を預かってくれる事になった神奈さんは只管苦笑だった。
アルトも言い方を考えればいいのに。
「…、俺達が簡単にくたばると思ってんの?」
「思ってる!!」
「琉は黙っとけ。…あのなぁ、戻ってくるから」
漸く痺れを切らしたように、泣き噦る彼等の前に蹲み込んだアルトは溜息をついた。
頭を撫でられたことで少しだけ反論する声が小さくなった。
「………怖いことしない?」
「それは、なんとも言えないけど」
「………痛いことしない?」
「気をつけるよ」
「死なないよね?アルト兄ちゃん」
ピタッと、撫でる手が止まった。
そして、何を思ったのかアルトは無言で3人諸共腕の中に挟み込む。……しっかりと生の体温を彼等に刻み付けるような、力強い抱擁だった。
「死なねえよ。」
ーーー約束する。
そう言ってから漸く、彼等は小さな顔に笑みを零した。隣で神奈が一番寂しがってるのはアルトじゃんね、と茶化すように笑った。
その言葉に神奈を睨むアルトは、心なしか図星で顔を赤くしているように見えるのだから、また可笑しな光景であった。
「月、笑うな」
「え、急に私に振る?」
「アンタも笑ってただろ!」
……少し、ホッとしている。
起きてから、本音に触れたあの出来事に何も触れることなく、普段通りに接してくれるから。