地下世界の謀略
(この世界が、似合わない───?)
「その辺にしとけ、馬鹿」
青年の声に眞田はようやく口を閉ざした。
舌打ちをした青年は飄々としている眞田を睨み付ける。
「怖いって」
「お前は言葉が過ぎんだよ」
「それ、一番言われたくないよ」
真面目な青年に対して少しも調子を崩さない眞田は、踵を翻して立ち去るどころか私達の横に並んだ。
月が驚愕で顔を染めると、眞田はそれを見てけらけらと笑う。
「────さ、行こうか」
「……何処に?」
「お家だよ、お家!ホーム」
(テンションがよく分からない)
ちらりと青年を伺う。
……その顔にイラつきが見えるのは気のせいでは、ない。
「お前は別で戻れよ、頼むから」
「え、何で。ひどいなあ」
「目立つんだよお前といると!」
青年は私の腕を乱暴に掴むと、早歩きで眞田と距離をつけようとする。が、眞田はしつこくも同じスピードで横についてきた。
「っついてくんな!」
「方向同じでしょうが」
「だから目立つっていってんだろ!」
二人のやり取りを見ていた月は、じっとその光景を黙視していた。
『目立つ』とは、この青年は誰に、その言葉を向けているのだろう。
(何を恐れるのか)
「よっぽど"荊(いばら)"が怖いんだねー」
ちょうど月が思っていたことを眞田が代弁するように青年を仄めかしていたので、月はようやく、我に帰った。