地下世界の謀略
青年の手がぎゅ、と私の腕に力を込めたのに、私は気付いていた。
「うるせえよ」
顔が見えないと、彼が何を思っているのか欠片も見えてこないのだとこの時初めて感じる。
……地上世界で私はこんなにも他人の気持ちに干渉したくなったことがあっただろうか。
「そんなのどうだっていい」
「……そうだね」
───君にとって、"そんなこと"と片付けられる問題なら、ね。
誰にも聞こえない、悟られないよう小さく紡いだ言葉の先には悲しみが。
まだ未発達な身体に傾倒する大きな罪に向けられた明らかな哀れみが。
彼の荷を重くするのだ。
「荊は君を逃がしやしないよ」
「……は、別にお前に関係ないだろ。それよりも眞田、お前俺に構ってる暇あるのか?」
「え?」
「もうじき仕事、だろ」
ああ!と叫びだす眞田によって、重苦しい空気は一瞬で消え去った。眞田は慌てたように青年の肩を数回叩いて眞田はどこかへ駆け出していってしまう。
見えなくなった背中に青年はため息を漏らした。
「……何で俺は叩かれたんだ?」
「……さあ」