地下世界の謀略
────彼の作る朝食に、「調理」されたものはほとんどなかった。
乱雑に切ったじゃがいもと人参を煮込んだスープ、野菜を切って合わせたもののサラダ、のみ。
出されたものに唖然としたものの、彼に言わせれば貴重な食材を無駄に使えないとのこと。あまり期待はするべきではないと新たに一つ学べた気がする。
(食材自体の味は良かったので文句は言えないが)
「あーアンタ、今日は外に出るなよ」
一足先に食べ終えたアルトは、冷たい床の上で先程からずっと、雑誌のような新聞のような文章の羅列をしきりに見ていた。
スープの皿を片付け終えたところで月はその紙を覗き混む。
「あ…」
「見んな」
初頭の文字を目にしたところで紙を折り畳みズボンのポケットに仕舞われてしまった。
「なんで見せてくれないの」
「……別に」
「荊。」
「!」
「今見えたんだけど荊って、なに?」
見せてくれないことにムキになって聞いた内容は、アルトの動揺を十分に誘うものだった。
───昨日の眞田とのやりとりから、ずっと気になっていたのだから、ちょうどいい。
そんな単純な好奇心で月はアルトに詰め寄った。