地下世界の謀略
瞼を貫く
先を歩く彼の後ろ姿はあの傷を思わせないほど逞しく、強い。
その奥底に闇を押し込めているだけで、彼は強いとは言いきれないのに。不思議とあの傷ごと彼を頼りたいと思ってしまう。
…毒を吐かなければ申し分のない男だろうに。
「ノロマ、もっと早く歩けないわけ?」
「…足の長さ考えなさいよ」
数歩先を歩くアルトの足の長さは多分平均の男よりも長い、パッと見けでスタイルの良さが浮き彫りになっている。顔だけでなくスタイルもいいなんて神様は不平等だ。
(あ、でも神様なんていないか)
いたら地上と地下、二つの世界に人間を分類して、区別したりしないし。
「結構かかるんだ」
「いや、あと少し。…もう疲れたのか?」
「まさか」
といいつつ、本当は土踏まずが痛くなるほど疲れが現れ始めていた。バレて馬鹿にされるのも癪なので敢えて言わない、この時ばかりは強がりな性格に生まれたことを誇れそうだ。
「………」
「な、なに」
「いや?」
何故笑われているのかは分からないけれど、目的地までは後少し。これは耐えるしかない。
時々こちらを振り向き、笑いを堪えるアルトの視線には気づかないまま月は痛む足を叱咤した。