地下世界の謀略
「兄ちゃん、あの人だあれ?」
アルトの身体から顔を覗かせて、一人の少年が私をじっと見つめていた。
下手くそに笑いかけると、何故か怯えたように身を縮ませてしまった。それには多少ショックを受けずにはいられない。
「あれは俺の連れだから。警戒しなくて大丈夫だ、琉(りゅう)」
あれ扱いを受けているが、子供の前なので一応怒りは押し殺す。
琉と呼ばれた少年はおずおずと私の前に来ると、「ん」と私に握手を求めてきた。もちろん私も喜んで小さな手を握り返した。
…可愛すぎる。
「僕、琉っていうの!えっと、あっちは、凛子と楊(やなぎ)っていうんだ」
えへへ、と照れたように笑う琉くんは、親切に彼方で様子を伺っている女の子と男の子まで紹介してくれた。彼の紹介に二人も小さく会釈をしているから、ほんとは人懐こい子達なのだろうと思う。
「お姉ちゃんの名前は?」
「私は月っていうの。」
「ゆえ…?変わったお名前だね!」
「よく言われるよ。よろしくね、琉くん」
「うん!」
琉くんは私の手を引くと、アルトの横に私を連れていった。そして無邪気に、にっこりと笑う。
「兄ちゃんたち、こいびとどーし?」
「なっ」
「……」
さらりと恐ろしいことを言う琉くんに、空気が凍えた。主に隣の男が原因で。
隣から殺気が飛んできたことで「ひっ…」と小さな悲鳴をあげ、ちらりと見たら、案の定鋭い目付きだったので私は思いっきり顔をそらしておいた。