地下世界の謀略




「あのさ……、いつもより危険だって言ってるんだけど」

「平気だよ。怖いけど」

「アンタ、この前の襲撃で学んだんじゃないのか」


「だってアルトがいるもの」


は、と言葉の先が続かなかった。
彼女が意気揚々に微笑んで、自信に満ち足りた顔をする。


「な、に……その根拠どっから」

「守ってくれるんでしょう?約束してくれたから、平気」


屈託のないその信仰に、思わず目元を抑えたくなった。

完全に自分を信頼し、縋ろうとする。もはや警戒心なんて自分に対して持ち合わせていないのだ、きっと。

アルトは馬鹿な女だと罵ろうとしたところで、閉口する。馬鹿なのは己だとすぐに気づいて、拳を握りしめた。



(嬉しい、なんて)




「……それにね、なるべく行けるところには行きたい」


打って変わって瞳に切なさを浮かべた月は、アルトの服の裾を弱々しく掴んだ。


「、置いていかれちゃう」

「……」


彼女が頼れるのは、もうアルトだけ。
最も近くにいるのはアルトしかいなかった。そして、隣に並んで見たいと思ったのも。



「お前、何を怖がってるわけ」


真顔でアルトは月の目を射抜いた。
語りかけるは彼女の心の底。

干渉することを躊躇っていた自分はここ数日間で大分和らいでいた。自分自身、気づかないうちに。







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