地下世界の謀略
何処か焦っているように見える青年を見てハッとした月は、動揺しながら口を開いた。
「あの、私を連れてっ────」
『………っ今度こそ逃がさんぞ!』
連れてってほしいとと紡ぐ前に、怒声と嫌な機械音が背後から聞こえた。
振り替えれば闇の向こうから不気味な気配が漂ってくるようで、「っち、もう来やがった」と吐き捨てた青年の声も届かなかった。
即座にそれが恐ろしいものだと感じ取ったところ、冷たい手が私の手をきつく掴む。
驚きで声をあげる頃にはもう、私は彼によって歩いてきた道を逆走していた。
「ちょ、どこにいくの!?」
「いいから黙ってついてこいっ…死ぬぞ!」
恐ろしいことを言うものだ。
きっと今の私は顔面蒼白に違いない、そんな私に構わずスピードをあげる青年は一体どんな顔をしているんだろう。
(黒髪……凄く綺麗、)
この状況に似つかわしい事を思いながら、ただ走った。
────とにかく、手を掴まれているとはいえ着いていくのに必死だった私は、機械音が背後から消えていくのに気付ないままだった。