地下世界の謀略
翌日、相変わらず日が閉ざされた暗めの道を歩いた。地上は晴天なのだろうか。いつもより明るい気がする。
アルトの家を出て、あの教会とは反対の道を行くのは初めてだ。ここ数日に行った街は、近くではあったが全て教会を通り越して向かっていたから。新鮮。
「なんか…寒いね」
冷んやりとした空気が肌を刺激する。
前を歩くアルトは聞いているんだかいないんだか、周りをキョロキョロしながら歩みを進めている。
なに、彼が私の話をスルーしている事なんて多々ある事。慣れたとはいえ、何度もやられると腹が立つ。
「アルト、聞いてる?」
「…なんだよ」
「聞こえてるじゃん、無視しないでってば」
「こっちは警戒しながら進んでるわけ。お前みたいに能天気じゃいられないから」
「……」
悪かったな、能天気で。
「…ここらが寒いのはいつもの事さ、貧民街は地上との層が薄い。上の空気が入ってきてるんだろ」
天を指差しながらアルトは説明する。
博識に優れているのは分かるが、なんだか学者より詳しそうだ。
段々と歩いていく内に靴に泥が付き始めた。泥濘があることに気づいたのはさっき、多分貧民街はもっと凄いことになっているのではないか。
「こっから先が、貧民街だ」
顔をあげると、廃れた看板と門のような柵が目の前にあった。足元に気を取られていてついた事に気づいていなかったらしい。
「お、おじゃまします」
「出迎えなんてないのに恥ずかしくないのか?」
「………うるさい」