地下世界の謀略
「────ふふ、月ちゃんにとってアルトは大切なのね」
純粋にそう言われて私は無意識に頷いた。特別、というよりもしっくりくる言葉だ。
神奈はじゃあいっかな、と再び窓の外へ視線を移す。
「いいの?」
「きっと平気よ、月ちゃんなら。だって、アルトを大切に思ってくれてるもの」
「そう、かな」
「うん。……さっきの質問の答えだけど、アルトがああいう性格になったのはきっかけがあったからよ。昔はもっと、純粋だったから」
「……」
ここまで聞いたらもう、知らずにはいられない。そんな欲求が私の中で膨れ上がって行く。
そんな私を見て、神奈がほくそ笑んでいた事に私は気づいていなかった。
────そうだね、どこから話そうか。
その頃、アルトは拳銃を大っぴらに出しながら相変わらず暗い貧民街を歩いていた。
(………おかしい)
まるで音沙汰がない。
いつもなら飢餓による争いの騒音だったり、差別的暴動が起きたり治安が乱れているはずなのに。ここまで静かだと逆に怪しくなってくる。
近くにある家の中を除くと普通に住人が血相悪くも飯を食べていた。
(気にしすぎ、か?)
何かあるとしたら、恐らくこの前動いて消えたという死体の件が絡んできているだろう。あくまで憶測なのだが。
────まあ、たまには静かなのも悪くない。