地下世界の謀略
「───なんでそんなこと知ってるかって?ふふ、それはまあ、……あとでね。だからそんな顔しないでよ月ちゃん」
話の途中で神奈が面白げにそう言った。
そんな顔って、どんな顔だろう?自分は普通に話を聞いていたつもりなのに。
怪訝そうに頷いておいた月は、この時自分が嫉妬を思わせる表情をしていたことに気づいていなかった。
「アルトは彼女を自分の光にしたの」
「……ひかり」
「そう。…絶望の中で笑う寧々さんは、アルトの希望だった。彼女はアルトの最初の理解者だったんだよ」
だから、アルトは未だに忘れられないでいる。
二人の出会いから暫くして起きた、あの悲劇に。
「………っ」
(胸がざわめく)
そう思った瞬間、話が核心に迫って行く瞬間。ふ、と身体から力が抜けた。
月は震えたように、声を漏らした。
「……ごめん、神奈。」
「?」
ここまで聞いといてなんだと、責められるかもしれない。
「これ以上……聞けないや」
微笑を浮かべる月の顔に神奈は目を見開く。
窓から入ってくる空気の流れが、やけにリアルに感じられた。