地下世界の謀略




其処は、神聖と呼ぶには古めかしく、ただの城跡と呼ぶには勿体無い程の空間だった。
錆びれたパイプ菅や乾燥し、ひび割れた土地、生温い空気、そんな地下世界とはまた違った独特の雰囲気がある場所だ。


「これ、アルマディナの遺跡か…」

「アルマディナ?」

「この地下世界が"できた"と同時に滅びた伝説の遺跡だ。正しくは、滅ぼされた、らしいけど」



初めて見た、と目を輝かせて城跡を見つめるアルトはなんだか幼く見えた。彼自身、元来好奇心旺盛な性格なんだろう。


------古い文献によれば、アルマディナは地下世界の「始まりの地」といわれている。

城を中心として、何百もの民族を統べる一つの国。ただの城ではなく国家だったその跡は、何百年も経った今ですら、この空間を支配していた。強く穢れなく聳え立つ歴史に、月は己の気が引き締まるのを感じる。



「…じゃあ地下世界の本当の名前って、アルマディナってこと?」

「まあ、そうなるな。元はこんな"世界"じゃなかったって話だし、」




どうなんだろう。此処はどんなに栄え、自然が辺りを包んでいたのだろう。
今じゃこんなに草木は枯れ、光は閉ざされているのだから、今を生きる若者には想像もできない楽園だったのだろうか。

その時、ハッとしたようにアルトが遺跡に目を向けた。



「…楽園」

「アルト?」



月を置いて、アルトは遺跡の中心部に足を走らせた。





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