地下世界の謀略
「………一度は落ち込んでいたみたいだけど、今はまた、何か調べ物をしてるよ。今の君と同じように」
(少しは立ち直った、という事だろうか)
本来なら、落ち込む彼の側にいて慰めるべきなのかもしれない。
でも私はそんな彼を慰める言葉も上手くかけてやれないのたがら、こうやって地道な事から彼をもう一度元気づけるための方法を知識を、蓄えていくしか無いのだ。
「…ここに来てから、彼に頼ってばかりなんですよ。今も彼に言葉すらかけないで、本ばっかり読んで、」
なんで恩知らずな女だと思われても仕方ない。
「アルトと遺跡を見つけた時、安楽街が無いかもしれないと分かった時、まだ出会って数日の彼の背中を見て……私、苦しかったんです」
この世界で生かしてもらっているのに彼に何もしてあげられない、そんな自分に辟易した。
誰かに答えを求めるばかりで、私は何もしようとしていなかった。きっとここに堕ちて来た事には意味がある、ここ数日そう考えるようになってからというもなの、一気に視界はクリアになった気がするのだ。
「だからこそこの地下世界ーーー私は此処を、全てを知り尽くしてみせます。自分のためだけじゃなくて、私を助けてくれてた彼の為に。アルトの役に立ちたい。
…………おかしいでしょうか、まだ此処に来て日も浅いのにそんな事思うなんて」
へらりと笑顔を溢して、月は隣に腰を下ろしていた理貴に飲み干した珈琲のカップの中身を見せた。
此処に来て、もうすっかり苦手だった珈琲も飲めるようになってしまったんですよ。
理貴さん。