地下世界の謀略
【地下世界】
それは、アルマディナと呼ばれる一つの国。
多民族国家から成りたっている世界だった。
太陽がなくとも、金色・緑黄に満ちた木々や草花が立ち並び、水に溢れる"楽園"のような世界だったのだ。
……しかし"何か"の存在によって地下世界は一変してしまう。突然大地は枯れ果て、水は泥水に変わり、また人の眼の光も失われてしまった。
そしてなんのタイミングか、その数十年後に地上からの遣い、「荊」がこの世界を牛耳り始める。人は囚われ、彼らの実験道具として何処かに姿を消し、そして帰らなかった。
「地下世界は、下手すれば地上よりも美しい世界だったんですね」
「……そうだね、もう何十年も前のことだ」
「何かの存在は、この本には乗っていませんでした。荊を追い掛ければ、何か答えは見えてきそうな気がするけど…」
非常にリスキーな話である。
荊の存在意義は不明確。
どんな組織であるかもわからない。
そんな危ない組織を態々出迎えるのは、命を投げ捨てるようなものだ。
最も、そうしなければ依然として謎は解けないままなのだが。
月は黙り込み、思い悩んでいた。
情報屋であった理貴さんはきっと"何か"の正体を知っていなくても、ヒントとなるような情報は握っているはずだ。でもそれを言わないということは、きっと私達自身に見つけてほしいと思っているじゃないだろうか。
「1つ、君に教えよう」