地下世界の謀略
「?」
考え込んでいた月に、そっと理貴は呟く。
「安楽街は滅んだんじゃない。
ーーーーーー奪われたんだよ」
(その言葉が強く、耳に焼き付いた)
そしてその言葉が浸透するまで数秒を要した。
きょとん、と目をまん丸にして口を半開きのまま自分を見つめる月がなんだか可笑して、笑ってしまう。
「私はそれを真実だと思っているよ。
………真実だと信じたいんだ。耳にした情報は全てじゃない、虚言だってなんだって、自分の目で見たものしか真実には成らないんだから。」
「、それじゃあ」
「うん」
「希望、……っまだあるんだって!信じていいんですか、」
指先を微かに震えさせ、半信半疑で月はその言葉に縋ろうとしている。
「そうだね」
その一言に、月は勢いよく立ち上がった。
空になったマグカップが勢いよく転がったが、もう彼女の目には映っていなかったらしい。
ーーーーー月はもう、さっきまでとは一変して泣き出しそうで、でも嬉しそうな顔をして、笑みを浮かべていた。
「私、ちょっとっ!失礼します!!!」
そう言って、全速力でこの場から立ち去っていった希望に満ちた若者を、理貴はただただ微笑んで、見送ったのだっだ。