前夜に乾杯【短編】
「ステキなクリスマス」
クリスマスには毎年何かが起こっていたと思う。
去年は届くはずのピザが渋滞に巻き込まれた豪雪だったから、って現金だけ返金された。
一昨年は熱。そう、みんながメリークリスマス!と楽しんでいるときベッドの中で死んだように眠っていた。
何がメリーだクソヤロウ。なにもメリーじゃないわ馬鹿者がっ。
今日は、駅前の噴水に八時に彼氏と待ち合わせ。もうかれこれ三十分以上待ちぼうけを食らっている。目の前に通る人達はみんな頬を赤くして笑っている。
いくらコートをきていても、ムートンブーツを履いていても寒いものは寒い。しかもみんなの幸せのような顔を見ると本当に凍えてきそうだ。あまりにもちっぽけに見えて虚しさから泣けてくる。
「はぁ………」吐く息は白い。
私はなんのために待っているのだろうか。
駅前のイルミネーションも、晴れやかで幸せそうな顔もどれもどれも惨めにさせた。
私もこうなる予定だったのか、と思うと沈まずにはいられない。
初めての彼氏というわけではないのだが、彼氏と迎えるクリスマスは初めてだった。
楽しみにしてないはずがない。
予約したフレンチも、見に行こうって約束したイルミネーションも、プレゼント交換も。
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