二度目の恋
村は電気が通りにくく、村全体が暗かった。道には街灯はなく、空には星が透き通って見えた。家の中も薄明かりの中で生活していた。だから夜は怖く、まるで魔物が襲ってくるような静けさが、愁の中で一番の恐怖だった。
 亨と恵子と愁は食事をしていた。四人掛けのテーブルに三人が座り、中央に亨、亨の左隣りに愁、亨の右隣りに恵子、つまり愁と向かい合って座るのは恵子だ。いつも席が決まっていた。椅子が少し高く床に足はつかなかったが、まずまずの座り心地のいい椅子だ。食卓にはいつもフレンチな料理が並んでいた。それは恵子がフレンチ専門の料理教室に通っていたことが理由でもあった。愁は恵子の料理がとても好きだった。だが、ただ一つ問題がある。華やかな食卓と裏腹に家の明かりは暗かった。これが原因か、いつも食卓は静かな雰囲気の中に包まれる。三人は食器の音をたてて、ただ黙々と食事をしているだけだった。愁はその静けさが嫌いだった。<きっとこんな雰囲気を作るのは、明かりが暗いからだ>愁は思った。愁はその静けさを消すため、いつも何か話すようにしていた。
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