二度目の恋
 ビッショリと濡れた二人は岸へ上がった。愁はすぐに上着とズボンを脱いでパンツ一丁になり、濡れた服を樹木の枝などにかけて乾かした。美月はその場にしゃがみこみ、俯いて縮こまった。「服、脱ぎなよ」愁が言った。美月は首を横に振った。「風邪ひくよ」また大きく首を横に振った。「何?」愁が言うと「あっち、向いてて」美月は恥ずかしがるように俯いていった。「あ、ごめん」愁は慌てて美月に背を向けた。美月は体を小さくして恥ずかしがるように上着を脱いで下着だけとなり、脱いだ上着を抱え込むように抱いた。愁は少し美月に顔を向けた。「見ないで!」美月は勢いよく叫んで、愁を睨みつけた。でも愁は、その瞬間に気づいてしまった。美月の背中にはいくつもの痣があった。愁は驚き、少しずつ後ろ姿のまま美月に近づいていった。「その痣、どうしたの?」愁は聞いた。美月は唾を飲み込み、体を小さくしたまま小さな声で答えた。「見ないで……」そしてまた「パパなの……」そう静かに答えた。
「えっ?」
愁は少し体を美月に向けた。美月はまた体を隠すように小さくした。
「見ないで……」
「ごめん……」
愁は小さく答えた。
「わたし……怖いの」
 愁は少し顔を上げた。また、美月は静かに話し始めた。
「パパが……パパが、私を殴るの……怖かった。いつも酔って……夜遅くに帰ってきて……私の顔を見ると殴って……私が何か言ったり、何か失敗すると近寄ってきて『悪い子だ』って……私がいい子にしてればいいことなんだけど……」
 美月は力強く自分の感情を抑えたが、瞳から涙がこぼれた。愁も静かに話を聞いた。
「女の人……連れてくるの。毎晩違う人が現れて、いつも変な声がする。ママがいるときからそうだった。ママが死ぬ少し前から……でも……最近……それもなくなって、パパは……いつも私を見ている……夜……私の近くに来て……私の……私の……」
 息を切らした。愁は美月に向き、思いっきり抱いた。
「私の……体を引き寄せて……シャツの隙間から、私の胸の狭間に手が……ギュッと握られて……そして足元に……手がさすられて……私のパンツの中に……」
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