僕のとなりは君のために
えっ? これって・・・・・・

僕は何度かまばたきをした。

振り返ると、教室の全員が僕を見ている。

女子グループは明らかに僕を軽蔑するような目つきで睨んできた。

初老の女教師は、眼鏡をクイっと押し上げ、その下の瞳が黒く光った。そういえば、この先生はまだ未婚だということを思い出した。

「いや、これは何かの誤解で・・・・・・あははは・・・・・・」

この大学の約七割が女子だ。先生もそうだけど、女の子たちを敵に回したら、ここではやっていけなくなる。

とりあえず言い訳はしてみたけど、誰も笑っていない。

みんなの目つきが変わった。犯罪者を見るような目だ。

先生の眼鏡に映った自分の冴えない笑顔が氷ついた。

「ここにいたのか!」

ドアが勢いよく開かれると同時に、透き通る声が教室の中で響いた。

君はツカツカと窓際に立ち尽くしている僕に歩み寄って、

「ちょっと来い!」

と腕を引っ張った。

ある意味、これで助かったのかもしれない。

これ以上この教室に居たら、僕はどうなるかはわからない。

みんな、犯罪者には容赦しないって顔をしている。現に僕が無理矢理引っ張られてるというのに、誰も止めてはくれない。
もちろん、先生も。

教室を出る直前に、一人の女生徒が爪切り用の剪みを逆手に持ち替えた。
その子と目が合った。

「!!」

怖くなって、逆に僕は君を引っ張るように走った。
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