僕のとなりは君のために
僕はガードしたまま、すべての真実を話すことにした。

もちろん、できるだけ君を刺激しないように言葉を慎重に選んで話した。
しかし、事実が事実なだけに、安易に信じられる内容ではなかった。

君は終始眉間をきつく寄せたまま、アゴに手を当てていた。
無言が不気味さを呼ぶ。
話し終わる途端に僕は殺されるんじゃないか、と不安が胸に募った。話しながら君に気づかれないように、一歩、二歩と後ろに少しずつ下がってみた。

ある程度の距離をとり、僕はガードを解いた。この距離ならすぐには手が届くまい。

やがて全てを話し終えると、君が例のポーズを保ったまま、何かを考え込んだ様子でいる。相変わらず眉間に皺を寄せていたが、視線が一点を見つめていたので、少しは無防備にも見えた。

何を考えているのだろう・・・・・・

表情を覗き込もうと、一歩踏み込んだ。

だが、踏み込んだ足に痺れが走り、身体に警報が鳴る。

いかん! これはひょっとして君の罠かもしれない。無防備に見せつつ、近づいた瞬間君の毒歯にかかってしまう。

危ない危ない。
キレイな薔薇には棘がある。ますますこの言葉が正しいと思った。

「お兄ちゃん!」

なんの前触れもなく、君の口からその一言が飛び出た。
あまりにも突然だったので、僕はビックリして後ろに飛び、構えた。

「言った気がする・・・・・・でもあとのことは何も覚えてない」

再び君の手がアゴに当てる。

「ああ。仕方なかったんだ。酔っていたからね。君の知人に連絡しようとも思ったけど、君は携帯を持ってなかったから・・・・・・」

「待って!」

「はい?」

「あたしの鞄を見たのね?」

しまった!

「えっ・・・・・・それは・・・・・・緊急事態だったから」

墓穴を掘った!

君の形相はあからさまに変わった。

「あれを、見たのね!」
「あれ?」

「私の作品」

「作品? あぁ、あのとうさく・・・・・・」

言ってから僕は後悔した。口が災いの元とはこういうことだ。

君は、「にゃぬ!」と叫んだ
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